もうしばらくは花村くんに片思いをしてもらおうと思います.
悶々としてこそ花村陽介! 青春真っ盛りの17歳!
一本にまとめたかったのですが,そうすると長くなってしまうので前後編に分けました.
明日はLCではなく予定を変更してこの続きを載せようと思いますお楽しみに.
だってしょうがないじゃんか、好きなんだから。
好きだから心配なんだよ大事なんだよ、無理してほしくないんだよ。
どうしてわかってくれないんだよ。
心配×羞恥
いつも目の前にあった背中がない。
半年前まではそれが普通の光景だったはずなのに教室は広く、色褪せてみえた。
あいつが持っている色なんて白と黒と灰色だけのはずなのに。
「なにかあったんかなー? 花村聞いてない?」
HRが終わって直ぐに里中が振り返って言った。
あいつのいない空間なんて見たくなくて机に突っ伏したまま開いていた携帯を閉じて視線だけをそっちに向ける。
携帯は握ったまま。バイブが鳴れば直ぐにでられるようにしてある。
「何も。さっきメールいれたけど連絡無し。後で電話してみっかな」
「昨日少し体調悪そうだったから心配だね」
「雪子もそう思った? 本人はいつも通りて言ってたけどなんていうか破棄と勢いがなかったよね」
「元々そんなにあるような人には見えないけど…」
里中と天城が空席を眺めながらテンション低めに話すのをぼんやりと聞いていた。
携帯を開いて閉じて開いて閉じてまた開ける。
なんで連絡の一つもないんだ。
液晶に変化は無く見慣れた待受にいらいらが募る。長いメールじゃなくていい、たった一言、『大丈夫』でも『風邪』でもいい。なんだっていいから携帯の向こう側にあいつがいるって感じたかった。
それとも携帯を触れない状況にあるのか?
約束したのに一人でテレビの中に入って無茶してるんじゃないだろうな。
-…………ありえないことじゃない。
「花村、はーなーむーらー! おいこら!」
「いって! いきなりなにすんだ!」
「なにすんだ! じゃないわよ、ばか! 前見なさいよ、まえ!」
「まえー?」
思いきり叩かれたノーガードの頭を摩りながら何やら必死めいた里中に促されるままに体を起し、あいつのいない席を通り越して黒板を見た。
「げ」
「花村氏よ、今が誰の授業の時間か知らないわけではないよの?」
忘れてた。
水曜一限はカーメンの授業だ。
『変わりない?』
たった6文字の華やかさや甘さなんてものは全くないていうか、俺は確か授業が終わるたびに切羽詰まっていくメールを何通も送ったはずなのに何故疑問系で、なんでお前が俺を心配しているような感じになってるわけ?
昼休みになって我慢も心配もなんか色々全部の限界がきて、もう学校さぼってあいつん家に行こうと帰り支度していたときになって漸く携帯が赤く光った。
あいつからの着信だって直ぐにわかる。
赤はリーダーの色。俺の一番好きな色。
待ちに待った反応に飛び付くように開いてみればさっきの文面だ。
4時間もの間何パターンもも返事を考えていたのにこれは予想外だった。
てかこんなの予想できるわけねーだろ!
意味わかんねーし! 心配して心配して心配して!事故でもあったんじゃねーかなとか、考えたくないこと考えてそんな想像する自分に自己嫌悪したり、授業に身が入らなくて山のような課題が出されたりしてんのは一体誰のせいだよ!
メールを読んだ瞬間はあまりにあんまりな対応に衝撃を受けて動かなかった頭と感情が、次いで体が動き出す。
メールの画面を消して1番プッシュ、コール。
面白みのない電子音を聞きながらずんずんと屋上目指して歩く。
メールなんてまどろっこしいことはもうやめだ!
足音が比較的荒々しいのは怒っているからのと、あいつが携帯の向こう側にいて繋がっていられることに安心したから。
目と鼻の奥が熱くなる。
(よかった……)
「はい」
「何なんだよあのメール!」
少し擦れていたけど聞き慣れたあいつの声を聞いて、顔と胸まで熱くなる熱を怒鳴ることで発散させた。
あんなメールで、「はい」の一言で泣きそうになってるなんて知られてたまっかよ。
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