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pantomime

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2008.05.14 Wed 「 漫ろ雨LC 短編

学園祭ルルーシュED→C.C説得の後,戻ってくる前の話です.
C.Cが説得してその後また数ヶ月時間が空いているので,その時間何をしていたのか妄想したお話になっております.
さっきは会いたいと思われる側でしたが,今回は思う側ということで.

イメージソングは藤田麻衣子さんの『今でもあなたが』です.
この曲で想像したルルライといっても過言ではないので,この曲を知っている方は気分を害するかもしれません.ご注意ください.
知らない方は,滅茶苦茶いい曲なので,一度聞いてみてください.オススメです.

どうでもいい話なんですけれど,さっきのお話かなり長かったですね;
通りで書いてて終わらないわけだ(苦笑)
今回くらいの長さであれば2時間弱くらいでかけるんですけど,あれは一体何時間かけたことやら…;
私は以外とジノがすきなんだなぁと思いつつ,でも,ルルだって大好きなんですよ? の気持ちを込めて.
お楽しみいただければと思います.





雨が降る.
昼間はあんなに晴れていたのに,今は視界さえ確保できないほどになっていた.
それでも傘を差さずに歩く.
雨に打たれていたい気分だった.
すべてを洗い流してくれる雨が,僕を流してしまえばいい.
僕の存在,僕の記憶,僕の彼への想い.
すべてを,なかったことにできるのなら,どんなにいいだろう.

『漫(そぞ)ろ雨』

学園祭からどのくらいの月日が流れたのかわからない.
何年も前のようにも思うし,昨日のことのようにも思う.
自分が皆の迷惑となる存在だったら,潔く消えよう.
出会った時,正式に生徒会に迎え入れてくれるといったときに決めたことだ.
優しく,どこまでも優しくしてくれた人たちを傷つけたくない.
その一心だった.
あの時も.
誰ももう,誰も傷つけたくない.
大切な人も,大事な人も,愛してやまない人も,僕の言葉で殺してきた.
守りたかったものまで,僕は…….
僕と一緒にいる人はいつか,僕が殺してしまう.
暴走してしまったギアスは止まらない.
僕の意思に反して,何時,どの言葉で発動するかわからない状態にある.
だから,もう二度と誰も傷つけないように.
誰も死なないように.
僕が死のうと,思っていたのに.
「また逃げるのか?」
C.Cの言葉が頭から離れない.
「力に飲み込まれて死を選ぶか,それとも力を支配するか,お前はどちらを望む?」
僕の望むもの.それは…….
歩くのも疲れた.
ふと目に入った電話ボックスの中に入って,しゃがみ込む.
湿気で空気が重い.
肌に張り付く髪や服も気持ちが悪い.
けれどももう,動くのも億劫だった.
何も考えたくない.
そう思うのに,ルルーシュ・ランペルージの顔ばかりが浮かんでくる.
一緒に見た屋上からの風景,夕日,すべてを背負って立つ,ルルーシュ.
一緒に買い物にも行った,温泉も入った.
記憶がなくても大切なものは何も変わらないと言ってくれた.
「ルルーシュ………」
立てた膝に頭の乗せ,体を抱えながら呟く.
その名を呟くだけで,愛しさが溢れ泣きたくなる.
会いたい.
ルルーシュに会いたい.
会いたくて会いたくて声が聞きたくてたまらない.
優しく包み込むように呼んでくれる声が好きだ.
困ったように笑う表情も,戸惑って怒る表情も,好きだ.
彼が………好きだ….
でも,会えない.
会ったら傷つけてしまう.
僕のギアスは聴覚情報を操作する絶対厳守の力.
話すことはできない.
じゃあ,電話,なら……….
顔を上げて,携帯よりも部屋に置いてあった電話よりも大きな電話を見上げる.
電話なら……公衆電話からなら,声を聞けるかもしれない.
聞くだけ.
声を聞くだけ.
一度だけ.一言だけでいい.
聞いたら電話を切ろう.
自分に言い訳をしながら,受話器を握っていた.
持っていた数枚の小銭を入れる.
そらんじられる番号を押すと,コールが鳴った.
1回……2回……….
心臓がコールが鳴るたびに早くなる.
出てくれ出ないでくれ出ないで,お願いだから…….
「はい」
低い,声,がした.
紛れもない,懐かしくて聞きたくて,会いたくて会いたくてたまらない人の声.
まっすぐで意志の強い声を聴いた瞬間,涙が,溢れた.
「…………っ」
「? もしもし?」
声が漏れないように口元を押さえる.
電話の向こうにルルーシュがいる.
会いたくてたまらない人が,すぐそばにいるような錯覚を覚える.
自分の知っているルルーシュの声とは違う.
緊張して,不穏に思い相手が誰だと探っているような声だ.
それでもよかった.
それでよかった.
僕が誰なんてわかってくれる必要なんてない.
忘れてほしいと望んで,出てきたのに,無様に生きて,二度と会わないと決めたのに我慢し切れなくて電話をかけた僕のことなんてわからなくていい.
ただ,声が聞きたかった.
君の声.
君にとってはなんでもないようなことだけれど,僕にとってはそれが凄く重要で…….
「ルルーシュ,どしたの? へんな顔して」
「無言電話なんだ」
「無言電話? そんなん早く切っちゃいなよ」
「あ,あぁ,そうだな………」
「ルルーシュ! 電話してる暇があったら仕事,仕事しなさい!」
生徒会にいるのか,みんなの声が小さくではあるが届いてくる.
暖かい空間.
懐かしい,けれど遠い.
ルルーシュの意識が外に向いた瞬間,ゆっくりと受話器を下ろした.
最後に,ルルーシュが「ライ!」と名前を呼んでいるように聞こえた自分の愚かさを笑う.
でも,幻聴でもそれで少し,腹が括れた.
「その力は,まだお前を支配していない」
C.Cは確かにそう言った.
できるだろうか,僕に.
ギアスによって振り回され続けた僕に,ギアスを支配することが.
もし,もしできたら会いに行ってもいいだろうか.
帰ってもいのだろうか,あの場所に.
帰ろう.
もし,ギアスを支配することができたら皆のところへ.
雨と汗と涙が混じってぐちゃぐちゃの顔を,濡れたシャツで拭いた.
泣くのは今日で最後だ.
電話も,もうしない.
次に声が聞きたくて我慢ができる前に力を支配すれば言いだけの話だ.
大丈夫,C.Cは出来るといったんだ.
方法がないわけじゃない.
大好きな人に会うためなら,きっとなんだって乗り越えられる.
あえない辛さを知ってるから耐えられる.
扉に手をかけた.
「じゃあ,また」
言えなかった台詞を呟いて外へ出た.
雨は降り続いていたが,少しだけ弱まった気がした.

END

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