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2008.08.05 Tue 「 祝50000hit御礼企画LC 御礼企画
日ごろの感謝をこめて,50000hit御礼小説『夏祭り-ルルライ篇-』です.
LCはいつもどおり長いので,ご注意ください.
あと後書きっぽいところでも言ってますが,ライが激しく受け臭い;

P4チームと特にリンクしているわけではないので片方だけでも十分楽しんでいただけると思います.
両方お読みくださっている方は雰囲気の違いを楽しんでいただけるのではないかと.

設定は無印からR2になる間のお話.ライもリヴァルたちと一緒に記憶をいじられたとお考えください.そうなるとライの人生はものすごく複雑なことになると思いますが(主に記憶の面で)細かいことはあまりおきになさらないようにお願いいたします.

皆様がいらっしゃるからこその50000hitという快挙だと思っております.
少しでもこの気持ちが伝わりますように,ありがとうございました.

花火を見たのは皆で旅行に出かけたあのときが初めてだった.
あまりにも綺麗すぎて,皆と並んでみるには気がひけて少し後ろで見上げていたら後でルルーシュたちに怒られた.
あのときの僕は自分に自信がなくて,いつか消える存在だと思っていたから思い出に残るような場面から無意識に逃げていたんだ.
「租界で花火大会があるらしい」
生徒会の書類の整理をしながらルルーシュが突然そう言った.
書類を見ながらつぶやくような声色だったので,その花火大会で生徒会が何か出し物をするのかと思ったが,そうではないらしい.
今ルルーシュがチェックしている書類も一通り目を通していたが,一番間近なイベント毎は一日水着パーティだったように思う.これは僕とルルーシュで廃案にさせようと目下議論中だが.
「花火大会がどうかしたのか?」
「だから………その……」
言いにくそうに一旦口ごもったが,意を決したように書類から顔を上げたルルーシュはゆっくりとこちらにアメジストの瞳を向けて言った.
「一緒に行かないか?」
 
夏祭り-ルルライ篇-
 
「これは……凄いな」
花火を見に来たはずなのに,僕は人の群れという集団の中心にいた.
ショッピングモールなんかとは比べ物にならないくらい多く,犇く人.
右を見ても左を見ても人人人.
普段は個別,または小集団で活動している人が大きな団体になるとそれはもう圧巻だった.
山を作り城を立て,土が削られた大地に湖を作ったと皇帝も昔いたと聞くが,なるほど,あながち嘘ではなさそうだ.
これだけ人がいたら山でも動かせる.そんな気分になる.
普段は車が通る道を人が堂々と我が物顔で歩き,路上にはいくつもの露天が並び立つ.
提灯という日本独特のライトアップは艶やかで,祭りそのものの雰囲気を向上させる効果があった.
だが今は日も暮れ始めた午後7時.辺りは薄暗くなりつつあり,見通しも悪くなってきた.
「こんなに人がいるところに来たのは初めてなのか?」
人波に呑まれながらも何とか通行の邪魔にならないようにと進んでいる僕とは違い,それも一興だといわんばかりに涼しげな顔をして隣を歩いているルルーシュが意外とでもいうようにいった.
「昔はどうだがしらないが,こんなに集まっているのところの真ん中を歩くの,は……はじめてだな.それにしても……凄い人だ….僕らはどこに向かっているんだ?」
「海辺…だな.ここの花火は船から上げるらしい」
「海からあんな大きなものを…,日本人は本当に手先が器用なんだな」
花火大会にルルーシュが誘ってくれてから,花火について少し調べてみた.
ブリタニア式花火は皇族のみが楽しむ一種の権力の象徴のもので,一方向からしか見ることのできない平面構造であるのに対し,日本式花火は民衆が娯楽として発展させ,全方向どこから見ても円形状に見えるというどんでもない技術を持って作られている.
打ち上げ花火がはかなく一瞬で開いて散ってしまうのも,円が崩れないためであるらしい.
そこまで計算しつくされた技術を民衆のために使う日本とは,果たしてどのような国だったのだろうか.
記憶があったころの自分が知っているか知らないが,叶わない願いと思っても一度見てみたかったと思う.
「っとと,あぁ,すまない」
本日何度目になるだろうか.人にぶつかって頭を下げる.
人の密集地帯を歩くのは未経験なのでなかなか慣れない.前からも後ろからも押し寄せてくるのだ.
行く人,戻る人.右に行く人,左に行く人.
一人がとまるとすべての動きが止まる.
―…………なんだかナイトメアのプログラムに見えてきた.
一つのプログラムをミスすれば全機能が停止するところなんかそっくりだ.
「ライ」
「? なん……っぶ」
「どこみてんだ! 気ぃつけろぉ!」
「す,すまない…」
こんなに一日で何度も頭を下げることになるのも多分初めてなのだろう.だんだんと首が痛くなってきた.
兎にも角にも考えごとをしながら歩くのは危ない.意識を集中して歩かなければ,ルルーシュとはぐれることだって十分ありえる.
がたいのいい人にぶつかって流石によろけたところを現在抱きとめられているのだが,その役回りはいつも僕のはずだったのに,なんとも情けない.
「ルルーシュありがとう.助かった」
こんなところで倒れたら無事ではすまされないことくらい容易に想像つく.
「本当に人ごみが苦手なんだな」
「苦手というか……慣れてないんだ.なかなかにタイミングを掴むのが難しいな.君はどうしてそんなにすいすいと歩いていられるんだ?」
ルルーシュは運動があんなにも不得手であるというのに,人波に乗るように進んでいく.
これは運動能力有無が試されているわけではなさそうなのだが,何かコツがあるんだろうか.
「タイミングもなにも流れに沿って歩くだけ……」
「ライー! ルルーシュー! 偶然じゃない!」
「ちょ,会長! 目立ちますって!」
「こんくらい目立たないとあいつら気づかないよ」
前方から大きく手を振って浴衣を来た華やかな一行が近づいてきた.よく見なくてもそれは見知った生徒会メンバーで,人をよけるどころか人を寄らせて歩いてくる.
そういう進み方もあるのか….
というかこの広大な路上の中,これだけ人にあふれ返ったところで出会うなんて偶然といえるのだろうか……寧ろそれは必然なのでは?
「ミレイさんに,シャーリー,リヴァルも来てたんですか」
「年に一回のお祭りだもの,参加しない手は無いでしょう? ライたちもくるなら言ってくれたらよかったのにー,去年の浴衣まだ残ってるわよ?」
「私たちが誘うおうと思って生徒会室に行った時には二人とももう出かけちゃってて,けど,こんなところで何してたの?」
浴衣を着て着飾った二人が来たことによって一気に辺りが明るくなった.
あれだけ押し寄せていた人だかりも自然と避けていくだけの迫力があるのだから凄い.
「会長たちこそどうしてここに? 花火とは逆方向のようですが」
背後からルルーシュが言う.
彼も会長たちの登場に驚いている様子はなさそうだ.若干声色が低めなのは恐らく不機嫌であるからだと思われるが,今は気づかなかったことにしよう.
「露天で買いたいものだけ買ったからこれから特等席に移動しようと思ってね.アッシュフォード家しかしらない穴場スポットがあるのよ!」
「焼きそばにフランクフルト,イカ焼きお好み焼き焼きとうもろこし……ちょっとした屋台が開けるくらいには買ってきたよ」
リヴァルが両手に抱えたビニール袋を掲げていった.楽しそうにしているが相当重そうだ.きっと,僕らも荷物持ちのために招集されそうになっていたに違いない.
とても三人分とは思えない程の多さだ.
「良かったら二人とも一緒に来ない? 食べるものだって沢山あるし」
心からの善意でシャーリーが髪飾りをひらめかせながらいった.
僕らは顔を見合わせて
「「やめておくよ」」
同時に申し出を辞退した.
「え,どうして? 他にどこか行くところでも……」
「いや,そういうわけじゃないんだけど…」
ミレイさんの言葉じゃないが,一年に一度のお祭りだ.大切な人と二人で過ごしたいじゃないか,とはあまりも使い古された言葉すぎて,恥ずかしいのでいえない.
「ライは祭りがはじめてだから,色々と案内してやろうと思うんだ.悪いな,シャーリー」
返答に困っている僕の変わりにルルーシュが答える.
「じゃ,じゃあ,後で合流するってのは? まだ花火まで時間あるし,それまでにくれば…っ!」
「ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッツ!」
「わ,出た.ガッツの魔法.でもなんで?」
「ほらほら,シャーリー行くわよ! 早くしないとアッシュフォード家相伝の見物スポットといっても誰かに取られちゃうかもしれないでしょ!」
「え? わ,ちょ,会長! まだルルと話が…!」
「いーのいーの,あの子達はあの子達で楽しむわよ.私たちは私たちで楽しんじゃいましょう! 二人の仲を邪魔する奴は馬に蹴られちゃうわよ~」
ぐいぐいぐいとシャーリーの背中を押して道を戻っていく3人.すれ違いざま,小声でミレイさんが「がんばんなさいよ」と言ったのは気のせいだと思いたい.ルルーシュにもなにやら含みを持った瞳を投げかけていたが,それも見ない振りをした.
ぎゃーぎゃーと賑やかな集団を見送ったあと,僕らの間には微妙な空気と沈黙が降りて,顔を見合わせてぎこちなく笑った.
絶対これはミレイさんのせいだと思いつつ,静かになった空気を楽しみながら二人同時に歩き出す.
「いつでも元気だな,あの人たちは」
「会長はイベント事が好きだから」
肩が触れ,手が触れ,自然と指と指が絡められる.
「ルルーシュは良かったのか?」
「?」
手を繋いで,お互いの体温を感じながら,先ほどよりは歩きやすくなった道のりをゆっくりいく.
屋台の喧騒.食欲をそそる食べ物のにおい.辺りは活気付いて賑やかだけれど,僕らの周りには静寂が漂っていた.
ルルーシュの傍は気を張らなくてもいいから落ち着く,安心する,心地いい.
「穴場スポット.穴場というくらいだから良く見えるんじゃないか?」
「だろうな.去年俺も参加させられたが見事なものだった」
「だったら」
そっちのほうがやっぱり良かったんじゃないかといおうとして,やめた.
多分,ルルーシュも僕と同じ気持ちでいてくれるのだろう.だから断ったのだ.
「ごめん,妙なこと聞いた」
「いや.それよりも何か食べないか?」
「僕は屋台のことはあまり知らないんだ.何かオススメのものとかある?」
「どうだったかな.この手の食べ物は体に悪そうだからあまり口にしたことが無い」
「-…………ルルーシュ,君はお祭りに何しに来たんだ」
そもそもルルーシュこそこんな人ごみが苦手のように思えるのに,どうしていきなり誘ったりしたんだろうか.
花火が見たいのならアッシュフォード学園の屋上からでも十分見れる位置にあると言うのに.
疑問に思ってルルーシュの顔を覗き込んでみると,ふわりとやわかく笑う彼と目があった.
これは………なんていう不意打ちだ.
弟のロロにしか向けられていなかった笑みを,最近は僕にも見せてくれるようになった.
それはささやかだけどとても大きな変化.
自愛に満ちたどこまでも相手をいつくしみ愛しさにあふれてるこの笑顔が,僕はルルーシュの持っているものの中で一番好きだ.
「去年,花火を見たときライは一人後ろで見てただろ?」
「え,あ…あぁ,そうだったな」
「だから今年は一番前で見せてやろうと思ったんだ.俺の隣で.場所もとってある」
「この間の賭けチェスでかけたのは花火の見物場所だったのか」
「悪くは無いだろ?」
「だからといって危ないことには変わりない」
「わかってる.ただの暇つぶしさ」
ルルーシュは肩をすくめ,どこか遠い場所を眺めた.
遠いどこまでも遠い,海の向こうの国を見つめるような目をルルーシュは時々するようになった.
するようになった? いつから? わからない.
でも,そんな目をルルーシュがする度に僕は言い知れぬ不安を感じる.
いつか,ルルーシュが手の届かない場所へ一人で行ってしまうんじゃないかと.
だからどこにも行かないように,今はここにいるんだと確認するようにぎゅっと彼の手を握り締める.
例え世界が,ここにいるすべての人がルルーシュの敵になったとしても僕だけは彼の傍にいると伝えるように.
「でも,ありがとう.今日,君と二人で此処に来れてよかった」
「その台詞はまだ早いんじゃないか? 花火をまだ見たわけでもないのに」
「いいんだ.今,そう思ったんだから.? あれはなんだ?」
「あれ? あぁ,射的だな.やってみるか?」
「当てたら景品は貰えるんだろうか?」
「そういうルールだったはずだよ」
「じゃあ,今日の思い出の品をいくつか持って帰ろう.僕とルルーシュ,それにロロの」
「そう簡単に取らせるように店主もしてないはずだが」
「こういうのは得意なんだ」
にっこり笑って屋台に近づく.
僕とルルーシュ二人だけの大切な,大切な思い出.
忘れたいほどつらいことがあったとしても,記憶を消されるようなことがあっても,今日の日のことだけは覚えていたいと思いながらルルーシュとの手を放し,店主から銃を受け取った.
まずは,思い出の品をいくつかいただくとしようか.


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*ライが恐ろしく受け受けしくなってしまったが,これでよかったのだろうか.
*ルルとライはすでに熟年夫婦のそれに良く似た空気をかもし出しているなぁと書いてて思いました.照れとか恥じらいとかあるにはあるけど,なんか初々しくない…いや,それがルルとライと思っているのでいいんですけれどね.お互いが傍にいることが当たり前と思っていたらいいと思います.
*一番楽しかったのはミレイさんたちが出てきた辺りです.結構好きなんですミレイさんたち書くの.シャーリーはちょっと書いていて可愛そうになりましたが,心を鬼にして当て馬になっていただきました;ごめんよ,シャーリー;
*二人共自分に向けられている感情に激しく鈍いので(お互い自覚を持たないと関係が発展しないいう…)シャーリーがルルのことを好きとかは全然気づいていないです.だからナチュラルにラブってます.
*一年間ルルとライが一緒にいたとしたら,ライはなんかめちゃめちゃ美人さんになっているという勝手な脳内イメージがあります.どのルートのライよりも一番綺麗に成長していると思う.このくらいの年頃の子たちは一年で顔つきががらっと変わるので…スザクルートのライはまた違うんだろうな.もう少し骨太な感じ?
*あと,これは本当にどうでもいいのですが,現代っ子たちが多いP4はワードで書いているとスペルチェックが入ってまっかになるんですけれど,LCはそんなことにはならないのがちょっと面白いなと思いまいた.ワードで眺めるだけでも雰囲気ちがうんだなーとか落ち着きがあるなーとかそんなことを考えながら書きました.
*どうでもいいことのついでに,これを書いていたときのBGMはJUMでした.だから若干テンション高いかもしれませんが,それはご愛嬌ということで.


 
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