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2008.12.01 Mon 「 親友×友達:花→主(p4)P4 短編
前回 親友×友達 の続きです.
もう少し続きそうです.
続きそうなのはいいのですが,此処にきて一つの問題が…この量すでに短編じゃねぇ;

コーヒーショップを後にした俺たちは、そのあとサッカー用品が見たいという長瀬に付き合ってスポーツショップに行った。
俺にはどれも同じに見えるスパイクやらジャージにテンションあがっている長瀬に、じゃあ俺もシューズ見てこようかなとバスケ用品に移動した一条。
取り残された俺と相棒は、広い店の中を並んでぶらぶらしていた。
「お前は見てこねーの?」
スポーツバックを手に取りながら何気なく聞いた。
さりげなく、いつものように明るく。
暗く沈んでいるなんて知られたくなかったから。
「この間そろえたばかりだから今日は良い」
あいつも俺の隣でバッグを眺めながら答える。
「俺もこういうのにしようかな」
「え?」
「花村指定のやつじゃないだろ? 俺が今使ってるのは前の高校のだし…ちょっと遊んでみてもいいかなって。どう?」
「どうって……」
向けられたスポーツブランドのロゴが入った白のバッグ。
鞄自体は似合ってるし、かっこいいと思う。
今年のニューモデルで、スタイリッシュだ。こいつらしいセレクトだとも思う。
思う、けど……。
「-……今のままでいいよ」
「そう?」
「そうだよ。お前、毎日部活に行ってるわけじゃねーんだし、荷物もそんなに多くないだろ」
「花村がそういうならやめとこうかな」
苦笑して、そっと置かれる鞄。
ほっとする俺。
肩の力が抜けていく感覚ではじめて体がこわばっていたことに気づいた。
なにびびってんだよと拳を握り締める。
鞄くらいであいつの生活が変わるなんて、そんな空想。
けど、これ以上知らないあいつが増えるのが嫌だった。
ただそれだけ。
影(シャドウ)にあったときにまざまざと見せられた本当の自分の姿そのものだ。
心底嫌な、心の狭い奴だとそう思う。
余裕がない自分が嫌いだ。
他方向に向けられていた苛立ちが己に。
少し大人に、あいつに頼られるくらいにはなったかなんてのはただの思い過ごしで、俺は4月から何も変わってない。
無力でうざくて、嫌なやつのままだ。
「で、どうして機嫌悪いんだ?」
「へ?」
それは突然といえば突然で、自然といったら自然な問いかけだった。
鞄を置いて俺を見て、にっこり笑ったのもとてもこいつらしかった。
「コーヒー飲んでるときから背中に穴が開くくらい俺のこと見てるくせに、振り返ると反らすだろ。最初は夏バテかとおもったんだけど駅前に来たときからおかしかったし。俺、なにかしたか?」
「あ、や、それはいいんだけど…」
「それってどれ?」
「朝………の、やつ…………」
「朝?」
同じ言葉を選んで繰り返す。
なんですかこれ。
尋問? 尋問されてませんか、俺?
堂島さんとは感じの違うベクトルであるけれど、明らかな威圧感を感じる。
後光が射してるさわやか笑顔が怖いんですけれど…。
「花村」
「はい」
「言いたいことがあるのなら言ったほうがいい。言わないとわからないだろ?」
ウソだ。
言わなくたって8割方予測はついていることのほうが多いくせに。
本当にわからないときだけ、こうやって聞き出すのは卑怯だ。
と、言えるわけもなく。俺がこいつに逆らえるわけもない。
俺が選べる選択肢はいつだって一つしか与えられない。
「……………お前、言わなかったじゃん」
「何を?」
「お前以外の奴が来るなんて、言ってなかったじゃん!」
小首を傾げるあいつに苛立って叫ぶように言った後、それがスポーツ用品店の中で相応しくない音量であったことと、周りに人がいたことを失念していたことを激しく後悔した。
微妙な間。静まる空気。集まる視線。
息が苦しい。
耐え切れなくなって助けるようにあいつを見上げると、きょとんと呆けている目があった。
何を言っているのかわかっていないような顔。
顔がかっと熱くる。
言った。
言っちまった!
言うつもりなんて、なかったのに!
「いいいいい、いまの、なし! 無しってことにしといて!」
「無しって言われても…聞いちゃったからな」
「じゃあ、なんでもない! なんでもないから!」
「なんでもなさそうにも見えない」
笑っているのか弾んだ声が上から聞こえる。
顔は見えない。見れない。色々恥ずかしすぎて。
『お前以外の奴が来るなんて、言ってなかったじゃん!』
ついさっき自分が言った言葉が頭の中で繰り返し再生される。
それはまるで二人っきりで遊びたかったといっているようで………勘のいい相棒はそういうことを全部含めて理解してしまうから厄介だ。
これが長瀬だったら絶対「ほうれんそうがうまくいかなかったことに怒ってたのか?」というに決まってる。
どうして相手が長瀬でなかったんだと心の中で呟いて、いや、その場合こんな恥ずかしいことを言うことも考えることもないんだけどと冷静に突っ込んだ。
「花村、俺、いいこと考えた」
相棒は俺がぐるぐるしているのに気づいているのかいないのか。
弾んだ声をまた弾ませた。
「へ?」
今度は俺がきょとんとする番だった。
そんなことを言い出すとは思わなくて、思わず顔をあげる。
見上げたあいつは始めてペルソナを召喚したときの悪そうな笑みを浮かべていて。
「え」
その意図が汲み取れなくて俺は間抜けた声を上げたのと、あいつが嫌な予感のする笑みのまま俺の腕を引っつかんだのはほぼ同時のこと。
「え、え? え???」
「走れ!」
「なんで!」
なんでこいつは俺の腕を掴んで、俺は引っ張られるように走ってるんだ?
それでも並ぶように足を動かしたのは。
「いいから!」
相棒の横顔がたのしそうだったからなのと、いつも冷たいあいつの手が熱かったから。
それになにより俺が嬉しかったからにほかならない。

To be continued...
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