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2008.08.18 Mon 「 死神×天使:花→主(P4)P4 短編
【ネタバレ注意】

発売から一ヶ月経ち,ネタバレ解禁かなと思って書いたお話です.
でも,此処にはやってない方も多くいらっしゃると予想してたたむことにします.
時期は12月,例の喧嘩イベントの個人的解釈です.

人を本気で殺してやりたいと思った.
撲殺でも刺殺でもなんだっていい,ちょうどその時俺にはテレビに人を入れられる力があって,そこに落としたら生田目が死ぬことがわかってたから「テレビに落とすだけ」といっただけで,本当は生田目が死ねば何でも良かったんだ.
こいつが菜々子ちゃんの,俺の,そしてお前の前から消えるならなんだって.
 
死神×天使
 
菜々子ちゃんの生命維持装置が悲鳴を上げたとき,俺が一番最初に見たのは心電図の直線なんかじゃなくて脱力して虚ろになるお前の瞳だった.
灰色の瞳が日食のように陰る.闇が射す.光が消え,仄暗い底に落ちていくのを俺は,はっきりと見た.
ありえない.
始めにそう思った.
事実を否定したかったわけじゃない.ただ,本当に素直にありえないと思った.
あいつから光が消えるなんてこと,あるのかよ?
ありえないだろ?
視界がぐらつく.体ごといったのかもしれない.
どっちが前で後ろだったか.自分が立っているのか倒れているのかもわからない.
菜々子ちゃんの傍に寄る事も,触れることもしないあいつの横顔ばかりがリフレインする.
こんなときでもあいつは何を考えているのかわからない.
夕飯のことを考えていたといわれてもおかしくないような顔をして,奈々子ちゃんをじっと見下ろしている.
なぁ,何考えてる?
お前,今,何考えてんだよ.
俺は知ってんだぞ,お前をずっと見てきたから.誰よりも近くで,誰よりも真剣に見てきたから知ってんだ!
お前がそんなに薄情な奴じゃないってことくらい,滅茶苦茶熱い奴だってことくらい,奈々子ちゃんを誰よりも大切にして何よりも1番に考えてたことくらい知ってんだ.
大事にしてた.とても大切に.
触れるときは硝子細工と間違えてんじゃねーかってくらいそっと,優しく,走り回るあの子を見守る目はどこまでも,温かく.
諭す口調は厳しく,褒める言葉は甘かった.
羨むほどに愛してた.
お前の全部で愛してた,正直妬けた.
あんな小さな子に嫉妬するなんて馬鹿みたいだけど,それくらいお前あの子のこと好きだっただろ.
だから
泣けよ.
怒れよ.
叫べよ.
罵れよ!
どんなに汚い感情でもいい,なんだって俺がお前を受け止めてやるから.
お前が俺にしてくれたように,全部吐き出して楽になるまで傍にいてやるから.
じゃねーと,今此処で吐き出しちまわねーと……
『壊れちまうな』.
頭の中で別の誰かが言葉を続ける.
自分のようで始めて聞くような,けれどそれでいて聞き覚えのある人を馬鹿にしたような口調の男の声.
『このままにしておくとあいつは確実に壊れる.そこに転がってるのとおんなじことになるぜ』
壊れる?
あいつが?
まさかそんなありえない.
『ありえない? はっ,ありえないって何がだよ.お前,あいつを何だと思ってるわけ?』
何って…リーダーで,強い奴で,憧れの存在で特別で…….
『それってヒーローかなにかと勘違いしてんじゃねぇの? お前好きだもんな,正義の味方ってやつがさ.お前が死にそうになったときかっこよく助けてくれたもんな』
声は言う.高らかに笑いながら,人を卑下して見下しながら.
ああ,この声は知ってる.
『友達もいっぱいできてさ,お前とは違うつーの? 似てるのに似てないところのほうが多くって全部においてお前より優れててさ,本とあいつて考えれば考えるだけ無敵超人つの? そんな感じだよな.でもさ,人間だろ』
俺だ…….
シャドウの俺が頭の中で話してる.
こいつが何かを言い出したときはろくなことが無い.確実に考えないように,見ないようにしてることを突きつけてくるから.
それはつまり,本とは気づいてるということ.
ああ,わかってる.わかってるよ,そんなこと,俺だってちゃんと.
『知ってて気づかない振りしてんのかよ最低だな,本と.でも,ま,そうだよな.お前こいつより優れてることなんてなんにもないもんな.無敵超人のあいつの手に負えないことがお前にどうにかできるわけないもんな!』
そうだよ,悪いかよ!
俺にできることなんてなんもねーよ! あいつが俺を救い上げてくれたようにはできねんだよ,俺は!
今だって,あいつが苦しんでんのわかってんのに,気づいてんのに何も言えずにいるんだよ!
なんて声をかけたらいいのかわかんねー,なにがきっかけになってあいつを傷つけるかもわかんねー.
怖ぇんだよ!
あいつがあいつじゃなくなんのが怖ぇ.
なくなる瞬間を目の当たりにするのが怖ぇ.
怖すぎて動けねぇ….
『本とに頭悪ぃな,俺.そんなん簡単じゃん』
簡単?
『原因を絶ちゃあいんだよ.あいつがあんな顔してるのは誰のせいだ? シーツの上で冷たくなってる子は誰のせいだ?』
―…………生田目だ.
『そうだ,全部あいつのせいだろ.あいつがいなかったらこんなことにはならなかった.違うか?』
ちがわねーけど,あいつをどうにかしたって何かが変わるわけでも….
『じゃあ,憎くないのかよ.生田目のヤローはお前たちがこんなになってる時だって一人個室でのうのうといきてんだぜ? 理不尽とはおもわねぇのか? 命がけで人を助けて来たあいつが誰からも救われずに壊れていくのを見て,お前は悔しくないのかよ』
………….
『あいつだって本心じゃそうだと思うぜ.ただ,いい子ちゃんだからどうすることもできねんだよ.だからさ,お前がやってやればいい.こういうときこそ相棒だろ? あいつにできないことはお前がやってやれよ.なぁ,俺?』
耳を貸しちゃいけない.
これは俺だけど,表に出てきてはいけないシャドウ(影)なんだから.
許されるわけない.許されないことを言ってる.
でも,俺にはどうしてもそれは間違ったことじゃないように思えて….
視界がだんだんとクリアになる.
時が動き始める.
両足で地面に立っている感覚.肌寒い部屋.重い空気.
急に開けた視界の中で,さっきと変わらないまま立っていたあいつが,動いた.
一瞬でささやかで誰も気づかなかっただろうけど,でも確かに動いた.
握り締められる拳.前髪に隠れた瞳の下,赤い唇が声にならない言葉をつむぐ.
「生田目………」
その時,俺の頭の中で線が一本に繋がった.
生田目.
菜々子ちゃんを死に追いやった張本人.
天城や完二やりせや直斗や小西先輩をテレビの中に突き落とした犯人.
憎むべき存在だ.憎んでいい相手だ.生きている価値なんてないやつだ.
ああ,わかったよ….
お前は優しいから,こんなときでも生田目のこと憎みきれないんだろ.
悲しい怒りをぶつけたいのにぶつけるほど嫌いになれないんだろ?
お前の優しさがお前を殺すなら,なら俺が.
俺が優しさなんてもの捨ててやる.
すっと冷える思考回路.
そしてこれ以上ないって言うくらい高速に動き始める.
「生田目――――――――――!!!!!」
廊下から堂島さんの声が聞こえた.
生田目はあそこにいる.
ならいくところもやることも一つだろ.

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*12月某イベントで花村と主人公は対立しますが,あれは花村が主人公を理解してないからじゃなくて,心配しすぎて540度回転しちゃったんじゃないかなという印象を持ちました(つまり,一周まわって反対方向に行った) 又は,主人公の本当に心の底にある感情に流されたか.菜々子ちゃんに思い入れがあるにしても,花村があそこまで激情したのはやっぱり主人公のことがあったからなんじゃないかなと思うのです.
*だから私はあのときの花村に嫌な感情は持たなかったし,花村は花村でなにか心の中で制御できない思いをわかってくれと叫んでいるように見えました.花村は主人公に泣いて欲しかったんじゃないかな.感情を出して戸惑って,普通の反応というのをしてもらいたかったんだと思います.もう無理すんだよ! なんでそんなこというんだよ! お前,苦しくないのかよ! 生田目助けて,お前はそれでいいのかよ! と言われているようで….
*花村は普段はお花ちゃんでヘタレで可愛いけれど,キレちゃった時が一番怖い人だとも思います.あのときの花村はマジ本気でしたからね.別に隠してるわけじゃないんだけれど,花村ってこー,何しでかすかわからないあやふやさなところがありますよね.キレちゃったらおっかないってVitaminXの一みたいな.

 
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