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2008.07.05 Sat 「 turn10.64 secondLC 短編
turn10.64 の続きです.
無駄に長いのは仕様です.すみません; きりのいいところで止められませんでした;
ところどころ月下についての仕様が書かれていますが個人的な妄想によるものなので苦手な方はご注意ください.

クラブもいいけど,月下もかっこいいですよね.
でもライ専用月下て長いから,別に名前をつけてほしかったよラクシャータさん;
正式名称は月下改とかになるのかしら? どうなんだろう?



頭でわかっていても,心が納得しないときがある.
そういうとき,どちらに動いたかで運命の天秤は死と生,出会いと別れを与える.
感情で動くやつは馬鹿だ.
そうやって笑っていた時期も確かにあった.
目的のためなら手段を選ばない.守りたいものがあるのだ,感情に左右されて見失ってはいけない.
けれど,結局僕は何も守れなかった.
だから今度は心の思うままに行動しようと思う.今までと違う運命を手に入れるために.

turn10.64 second

「黒の騎士団全員戦闘準備!」
ゼロの声が響き渡る格納庫.先ほどまでは人とナイトメアで溢れかえっていたのに,今はガランとしてとても静かだ.
広い格納庫に二人きり.僕は隅に置かれた青い月下の中にいた.
急ごしらえの戦闘.指揮系統は全てゼロに委ねられいるために僕の出る幕は無い.故に僕も戦闘に参加すると進言したのだが,返ってきた答えは待機命令だった.
でも僕は,地形の優位は望めないという大きなリスクの中でも危険を犯してまでカレンを助けようとするゼロを支えたい.カレンがいないという痛手を埋めることができるとは思っていないけれど,それでも役に立ちたいと思うのに.
ゼロだって僕がこんなところで指をくわえて待っていることなんてできやしないとわかっていているはずだ.
わかっていて,それでもそんな命令を下したのは一重に「カレンを失った今,お前までも失うわけにはいかない」という想いがあるからなのだろう.それが汲み取れたから僕も無理に説得することはしなかった.
飛べない月下では,戦術に加えることにもできないことも歯がゆかった.
忙しなくキーを叩きながら,月下の無線から続々と告げられるゼロの指揮に耳を傾ける.どんなときでも状況を把握していたい.
爆音が響き渡る.戦闘が始まった合図だ.
早くしないと.
焦る心を抑えながら,慎重にプログラムを書き換えていく.
飛べない月下がだめだというのなら,月下を飛ばせてみせればいいだけのこと.ラクシャータさんの開発チームでさえ手詰まりでいた飛翔滑走翼と月下とのシンクロ率をあげていくのは至難の業であることは重々承知しているけれど,今は無理をしてもらってでも飛べるようになってもらわないと困る.
画面に写る赤いランプが一つ一つをグリーンへと変わっていく.
作業をしながら,頭の別のところではこの月下と自分との出会いを思い返していた.
僕専用のナイトメアとして作られた青い月下.初めて会ったとき,なんて綺麗な機体なのだと,こんな美しい機体を見たことがないと思った.
自分の手足のように思い通りに動く月下は,他の人にはピーキーだといわれるほど扱いにくいらしく,カレンは「よくこんなの動かせるわね」と苦笑していた.その度に僕は「この月下ほど優れている機体はないよ」と鼻高々に言っていた.
戦場を共に駆け,共に戦い,騒がしい黒の騎士団の中で安らぎを求めてコックピットで寝た事もある.
僕はいつも月下に守られてきたと思っているし,だからこそラクシャータさんが「ライの暁もつくってみようか?」といってきたとき,断ったのだ.
「僕はこの月下と共にありたい」と.
生きるも死ぬも一緒だ.たとえ性能が劣るとしても,それをカバーできるほどの能力がこの月下にある.負けたとしたらそれは月下ではなく,僕の力量が敵わなかっただけの話だ.
「いろいろなことがあったな.お前が僕の愛機になってくれて本当に嬉しいよ.だから」
だから,もう一度戦おう.
お前の力を見誤っているゼロたちに見せ付けてやろうじゃないか.お前はこんなものじゃないって.
休むまもなく叩いていた手を止め,最後のひとつを押すと,赤いランプが全てグリーンに変わった.
月下は飛べる.
お前となら,怖く無い.

-斑鳩作戦司令室-
「通信! 作戦補佐からです!」
「ライか?」
「はい,え? そんなの無茶ですよ!」
「どうした」
「救援に向かうとおっしゃっています」
「なに? 通信をこちらに回せ!」
「は,はい!」
(なにをやっているんだ,あいつは…!)
待機命令を出したとき,素直に引いたなとは思っていた.ライなら白兵戦でいいから自分も戦いたいと言い出すと思っていただけに正直拍子抜けもした.
けれど,リスクの大きいこの戦闘にライを出すわけにはいかなかったために気にすることも無かった.ライがいるとそちらにばかり気がとられてしまう.今は全体を見るときだ.策を練ってからの戦闘ならまだしも,練りながらの戦闘ではライの生存を優先する命令を下しかねないという自信があった.ライのことになると冷静ではいられない自分がいる.ライもそれを汲み取ってくれてたのだろうと思ったのだが,どうやら違ったらしい.
「少々手こずると思う.斑鳩作戦指令資質にいるみんなは何かに捕まるなりしておいてくれ」
若干緊張しているような声.不安が見え隠れするそれをライの口からはじめて聞いた気がする.
お前は何をやろうとしているんだ?
胸騒ぎがする.思いついた90パターンのライの行動の中から,一番あってほしくない一つが大きく主張し始めていた.
「待機命令を出したはずだぞ,ライ.勝手な行動は慎んでもらいたい」
「ゼロ!? どうして…ゼロには開かないでくれって頼んだのに」
「そんなことはどうでもいい.何をするつもりか知らないが,おとなしくそこに……」
「ゼロ,僕はこれから沼地から脱出できないでいるナイトメアの救出に向かう」
はっきりした声だった.この声は何度か聞いたことがある.
ライが誰に何を言われようと,己がどうなろうと構わずに決めてしまったときの声だ.
まずい.
黄色いランプが視界の端で点滅する.
ライは確実に何かをやらかそうとしている.それもとんでもなくよくないことをだ.
止めなければ.
止めなければ,もう二度とライとは会えないそんないやな予感さえしてくる.
「っ! ライ!?」
「後からそちらと合流するという形でいいかな.朝比奈と千葉は抜け出せてもそろそろエナジーが切れるころだ.どう考えても騎士団全員を脱出できるような状態じゃない」
「なにいって…お前の月下には…!」
「飛翔滑走翼ならさっき付けた.大丈夫,飛べるよ.上手く飛べるかどうかわからないけれど…でも,皆を引き上げさせるまでは落ちるつもりはないから.ハッチを開けろ」
「待て.おい,やめろ! 戻れ! ハッチを空けるな! 何をしている!」
正面に徐々に開くハッチが正面のスクリーンに映し出された.
止まらない.止められない.
「聞こえないのか!」
叫んでも届かない.何故ならハッチを操作している整備士の目が赤く染まっていたから.
(ギアス…!)
「僕のギアスは君と同じで一度暴走しているからあまり使いたくないな.僕は君のようにはなれない.だってもしまた暴走してしまったら君とこうして話せなくなるだろ? それは嫌だからね」といっていたのに使ったのか,ギアスを.
愕然とする.
ライは本気だ.本気で自分がどうなってもいいと思って動いている.
それは即ち,死んでも構わないと思っているということだ.
「あの子,死ぬつもりだね」
通信の外からラクシャータが神妙な面持ちで言った.
「どういう意味だ」
「あの月下と飛翔滑走の相性が悪かったのは本当だけれど,そんなものは今のあの子みたいにプログラムを書き換えちゃえば何とでもなる問題なのよ.問題は耐久性」
「耐久性?」
「機体がGに耐えられないってこと.ライ専用月下はスピード重視した軽量タイプだから装甲は元々薄くできている,だから飛ばさなかった.負荷がかかりすぎたらそこで終わりだからね.このことはあの子にも説明したはずなんだけど…」
「ごめん,ゼロ」
「謝るくらいなら戻れ!」
そうこうしている間にもハッチは絶望と共に口をあけていく.あの向こうに行ってしまったら,本当に失うことになるのか.
ナナリーのように.
血の気が引く想いだった.すでに命令ではなく懇願になっていることにも気づかなかった.
戻れ! 戻ってきてほしい.
止まれ! 頼むから.
なのにライは戻らない.止まらない.
「行くことに関しては悪いと思ってないから,そっちじゃなくて」
なのにライは淡々と語りだす.不安も恐れももう無かった.あるのは強い意志と信念のみ.
「実を言うとさっき僕は君の事を少し疑ってしまった.カレンを見捨てるかもしれないって.その選択は弱い者に優しい世界を作ろうとする君の信念を曲げるようなものだったのに.だからこれは僕から君への罪滅ぼしと思ってもらって構わない」
「なにを…」
何を言っているんだ
「司令官が君でよかった.命を預けてきたのが君でよかった.だから今度は僕が君からいてよかったと思われる行動をしないといけない.できればカレンも取り戻そうと思う.そのとき月下は壊さなきゃならないけれど…ラクシャータさん本当にすみません.月下ありがとうございました.とてもすばらしい機体だと思います.ちゃんと月下は飛べるって証明しますのでそれで許してくださいね.それじゃ,ゼロ行ってくる.君たちはこのまま撤退を続けてくれ」
「そんな…」
そんな永遠の別れのような台詞を聞きたいんじゃない.
「ディートハルト,僕は指揮系統とは別行動をとる.戦力外として考えてくれればいい」
「承知いたしました」
「ディートハルト!」
「オープンチャンネルをこれほど鬱陶しく思ったことはなかったな.言いたいことの半分も告げれやしない.もし……いや,仮定の話をするのをやめよう.生きて世界を正しい道へ.それが僕の願いだ」
「ライ!」
「ライ専用月下,発進する」
最後に聞いたライの声は,少しかすれていたのかもしれない.斑鳩が大きく揺れたあとでも,ライのいなくなった格納庫を眺めたときもその声が耳にこびりついて離れなかった.
「大好きだ」
それは本当に小さな.聞き取るのも難しいほど小さな声だったけれど,幻聴でもノイズでもなく確かにライの声だった.
「全軍は速やかに撤退を! このままポイントに進みます」
「ディートハルト!」
「ゼロ,此処は退く時です.作戦補佐のことは天に任せ,我々は速やかに移動するのが上策というもの.そうすることで,彼の負担を減らすとお考えください」
「く……っ」
画面が変わり飛ぶ青い月下が映る.ライの機体.
はじめは慣れないのかなかなかに手こずっているようだったが,数秒もすれば違和感無く飛ぶようになった.
斑鳩は進む.青い月下は戻る.
ライと俺との進む道が分かれた瞬間だった.

To be continued...

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