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2008.05.07 Wed 「 10000hit お礼小説 02LC 御礼企画
なにやら投稿できそうなのでやっちゃいます.
前回の続きです.

turnの番号は適当です.
おそらくこの辺りでこんな話が出たのではないかと.
もうちょっと遅いのかもしれませんが,スザクがEUに行く前ということで.
この話はこれで終わりです.
オマケのような小噺があと3本くらいありますが,それはまた後日….

兎にも角にも10000hitありがとうござました!
いつもとは違う感じで,ルルーシュは名前しか出てきませんし,CPというわけでもないですが,楽しんでいただけたらうれしいです.
あと,ラウンズの皆さんが偽者くさいのでご注意ください.



剣を抜いてスザクに切りつけるが,それはあっさりと避けられる.
こちらも初撃でどうにかできると思ってない.
何しろ,ナイトメアで藤堂の三段突きを回避する男だ.
すかさず,体勢を立て直しきれていないスザクへと剣先を向ける.
「…………っ」
しかし,それは脇を通りすぎ,マントと腕で捕らえられた.
舌打ちして,剣の柄に重心をかけ,上段回し蹴りを顔面に向かって叩き込むが,これも読まれていたのか左手でガートされる.
一度距離をとるために下がった.
流石はナイトオブラセブンというべきか,相手が武器を持っていても何のことはなく対処している.
全く好きのない構えは,日本古来の武術を会得しているためのものだろう.
なら.
余計な策は無用だと,真っ直ぐに拳を握って突っ込んだ.
スザクも同じ考えか,同じタイミングで拳を向けてくる.
「お二人ともやめてください!」
声がして,条件反射のようにお互いが止まる.
僕はスザクに,スザクは僕に拳を向けたまま固まった.
そしてゆるゆると鈍い動きで声がしたほうに視線を向ける.
耳慣れた声だった.
いつもより緊張と必死さが含まれていたが,それでも聞きなれた主の声に違いはなかった.
「ナナリー…」
「ジノ…と,アーニャも一緒か」
拳をゆっくりと下げながら,そこにいた主の名を複雑な気分で呟く僕の隣で,スザクが車椅子を押しているジノと,その隣をついて歩くアーニャを確認した.
ジノはにたにた笑っていて,アーニャは携帯のカメラをこちらに向けシャッターを切る.
「記録.…ありがとう……」
「二人が廊下の真ん中で大喧嘩してるって兵士が泣きついてきてさぁ,アーニャに相談したらお姫さんを連れて行くといいってさ.だから,こーしてお連れしたってわけ,な?」
「…うん」
「何があったか知らないけどさ,喧嘩はよくないって」
「それにしては楽しそうだな,ジノ」
ナナリーの目が見えてないことをいいことに思いっきり不満げにジノを睨みつけるが,そんな行為には慣れているといわんばかりに表情を変えることなく近づいてくる.
一瞬視線が腫れたスザクの頬に向けられたが,何も言わなかった.
「何があったのですか?」
「それは………」
ジノに押されていた車イスが止まると,ナナリーが心配そうに顔を上げる.
僕は口ごもるしかなく,逃げるように視線を彷徨わせた.
心から心配している声に嘘は返せない.
なんと言い訳したら言いものか…頭をフル回転させて困っている僕をよそに,スザクはナナリーの前に跪き,彼女の手にとった.
「ナナリー,よく聞いてほしい」
「スザク!」
「スザクさん,話してください」
「ナナリー………」
「私のことでお二人が喧嘩をしているのは悲しいです」
「…………」
「君がエリア11の総督になることが決まった.近々陛下から勅命が出ると思う」
「私が総督…ですか…?」
「そう」
「私にできるでしょうか?」
「心配しなくていいよ,なにも政治をやれというわけじゃないから.ただ行って皆を安心させてあげて欲しいんだ」
「安心,ですか?」
「ゼロが中華連邦で日本の独立を宣言したのはナナリーも知っているよね?」
「はい」
「軍もできるだけ早急に黒の騎士団に対応していくけど,租界にすんでる民間人は不安でたまらないと思うんだ.ナナリーはそういう人たちの希望になってもらいたい.やってくれるかい?」
「…………」
何が,希望になってもらいたいだ.
鼻で笑い飛ばしたいのをぐっとこらえてスザクの話に耳を傾ける.
弱いナナリーの存在を見せ付けることで民衆の同情を買い,それを傷つける騎士団への不信感を煽るためじゃないか.
そのついでに,ゼロ,そしてC.Cをも捕まえる.
もし,ゼロがルルーシュじゃなく,今までどおり総督を殺そうとも,皇帝に痛みが生じることはない.
何しろ今まで死んでいると思われていた姫なのだ.
しかも皇位継承権をもっているとなると周りからも邪魔な目で見られていてもおかしくない.
ナナリーはそういう輩の不満をも静めるための撒餌に過ぎない,お飾りのユーフェミア以下の扱いだ.
学校にも行かせず,屋敷から出ることの許されない監禁生活を送らせたと思えば次は餌になれだと.
皇帝陛下の考えが手に取るようにわかって吐き気がする.
冗談じゃない.
ふざけるな.
どこまでこの子を苦しめるつもりだ.
ルルーシュと同じように記憶を消していたらまだしも,ナナリーにはしっかりと思い出が刻まれているんだぞ.
スザクのつむじを見下ろして,一発この頭に蹴りを叩き込んでやれば正気に戻るかと物騒なことまで考えた.
「ライさんはどう思いますか?」
「僕は反対です」
だから,ナナリーの問いにも即答した.
「それは私が未熟だからですか?」
「そんなことは思っていません.ただ,僕は貴女が政治の道具として利用されるのが嫌なだけです」
「でも,日本の皆さんには総督が必要なのですよね?」
「そうですね.日本は自治区なので誰かが上に立ち,指揮をしなければなりません」
ナナリーの顔が曇る.
「………」
こういうとき,ナナリーの中で答えは決まってしまっているのだということはこの1年一緒に居て,知っている.
頭の悪い子ではない.
ルルーシュに似てとても賢い子だ.
皇帝の本意を図れていないわけではないのだろう.
それを,わかっていてそれでもその道を選ぶのか?
無言の問いをナナリーに投げかける.
雰囲気で悟ったのか,ナナリーはこちらに顔を向け,しっかりと頷いた.
ナナリーが覚悟を決めているのなら,僕に言葉は残されていない.
「貴女が行くというのなら僕はそれに従います」
「ユフィ姉さまがお勤めになっていたことを私に勤まるかどうか自信はありません.でも,少しでも皆さんのお役に立つのならやってみたいです」
「良かった.大丈夫,絶対危ない目になんて合わせないから」
「…………」
「スザクさん,大丈夫です」
「え?」
「私にはライさんという頼もしい騎士がいらっしゃいますから.ね,ライさん」
微笑むナナリー.
安心しきっている笑顔が花開く.
たっぷり自信をもって告げられた信頼の声.
スザクが握っているのとは別の手をとって跪き,頭を垂れ,キスをする.
「イエス・ユア・ハイネス.私は貴女を守る騎士.全てのことから貴女を守ってみせます」
「はい」
それが,ゼロやスザク,そして世界だとしても.
この時を生きているこの子を力の限り守ることを誓った.
誰にでもなく,この子本人に.

END

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