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前回の続きです.
予定通り(?)にちゃんと終わりました.長くなりましたけど,それはいつものことなので華麗にスルー.
どうでもいい話なんですけど,これの保存されているメモ帳のタイトルは『ピコピコ』です.
たいていつけたタイトルとは別の名前がつけられます.
現在私のPCの中にはそんな,タイトルを見ただけではなんだかよくわからないファイルが散乱しております.
そろそろどうにかしたいです(デスクトップにファイルはできるだけ置かない派)
後半になるにつれてグダグダですので,心してください.
いつも以上に綺麗にまとめることができなかった;
できなかったんですけれど,書きたいことは書けたのでそれなりに満足しています.
ラブラブイチャイチャがテーマです.
殺伐としたものを書いているとあほみたいにラブラブなものが書きたくなります.
でも,これはちょっとやりすぎたかな?
日が完全に沈むと,地上は光であふれる.
昼間と同様に明るい租界の中を目的地に向かって一人,歩く.
秋の声が首を掠め,通り過ぎた.
夏の名残を残しているものとは違い,冬の気配を運んできたそれ.
昼間は暑いくらいなのに,途端に冷え込む.
ルルーシュに外に出るときは防寒対策をきっちりしておけよと耳にたこが出来るくらい言われていたのに,失念していた.
人の波から一歩はずれ,だらしなく着ていた制服のボタンを一番上まで閉めた.
ガラス戸に写った自分が視界に入る.
半透明な僕は,行くべき場所も帰るべき場所もわかっているのに,安息を与えてくれる人を求めて彷徨っている迷子のような顔をしていた.
迷子も何も探す人すらいないのに,なんて顔をしているんだ.
情けない自分から視線を引き剥がし,逃げるように歩き出した.
purchase 02
「本当に無駄に商品があるんだな」
ショッピングセンター内.
足りなくなった日用品の補充を始めて数分後,やはり一人で来たのは間違いだったと思い知らされる.
歯磨き粉一つ買うにしてもさまざまな種類があり目移りして仕方が無い.
以前使っていたパッケージと同じものを探すが,同じメーカーで少しずつ異なるのでどれが正解なのかわからない.
先端の部分は白だったか,緑だったのか….
「…………」
二つの歯磨き粉を見比べてこっちだったかなと思うほうをカゴに放り込んだ.
メーカーが同じなのだからそんなに違いは無いだろう.
自分の生きていた時代の世界とは異なり,この時代はものであふれ返っている.
何度もきているショッピングセンターだったが未だになんだかわからないものも多い.
一つ一つ取り上げ,どういうものなのか考察するのも面白そうだが,それはまた別の機会にすることにして,見知ったものが並んでいる棚に真っ直ぐ向かう.
文具コーナーにある一角.
買い物に出たとき,この文具コーナーでナナリーへのお土産を買うのがルルーシュと僕との決まりだった.
言葉に乗せて決めたわけじゃない.
最初はルルーシュも立ち寄っていいかと聞いてきていたが,今はその流れが自然なものになっていた.
形は違えど,ルルーシュと同じように優しく,穏やかで可愛らしい少女のことを思い浮かべる.
天使のように愛らしい女の子.
彼女が笑うと場が明るくなり,空気と心が温かくなる.
そのひまわりような笑顔に何度救われたことか.
色とりどりの正方形の紙をさがす.
今日は何がいいだろう.
一重に折り紙といっても柄も手触りも様々だ.
目の見えないナナリーのためにいつもと違った感触のあるものを買っていきたい.
「これにしよう」
しばらく吟味した後,下段にある折り紙の中から一つを選び,取る.
花や様々な模様が描かれている和紙で出来た千代紙だ.
赤が主体で可愛らしい.
ブリタニア製でも日本製に近づけているだろうからそれなりに特殊な手触りをしているだろう.
脇においてあった籠に入れ立ち上がろうと腰を上げかけたときに,コツッと乾いた靴音が頭の先からして止まった.
何故だが,ゆっくり顔を上げていく.
見知った靴に,黒い,アッシュフォード学園指定のスラックス.
まさか.
ありえない.
だって,仕事があるって……….
視線を上げていくにつれて,確信と不安が入り混じり心臓が高まる.
完全に立ち上がっとき,目の前に立っている人物を見て,何故だか涙が出そうになった.
「此処で待っていれば何時か来るだろうと思っていた.気づいてなかったのか」
アメジストの瞳が優しく微笑む.
特別な人にだけ向ける,極上の笑み.
黒い髪が揺れ,花の香りが近づく.
それは紛れも無い,見間違えようもない
「…………ルルーシュ……」
ルルーシュ・ランペルージ.
その人だった.
「他の誰に見えるんだ」
「…なん,で.だって,仕事があるって……」
「会長に頼み込んで,明日にしてもらったんだ.直ぐに追いかけたのにお前,部屋にも寄らずそのまま行っただろう.あれだけ夜は冷えるからと言ったのに…」
呆れ顔で僕の格好を一瞥するルルーシュは,しっかりと学生服の上に薄手の上着を羽織っていた.
「ルルーシュが追いかけてくるなんて思わなかったんだ」
「約束してただろ」
「約束ってほどのものじゃないよ.時間が無かったら別に良かったんだ」
「時間が出来たから来た.というのならどうだ? それとも来ないほうが良かったか?」
「………意地悪を言うんだな」
「それんなことはないさ.今だってそれほど嬉しそうな顔をしていないように見えないが」
「買い物は終わった.帰るぞ」
ニヤニヤしている顔をひと睨みして,ルルーシュの脇を通り抜ける.
顔が熱い.
嬉しい.
にやけそうだ.
けれど,手放しで喜んでいるとルルーシュに知られるのは癪だ.
ルルーシュはくすりと笑った後,「はいはい」と肩をすくめ後ろからついてきた.
少し歩みを遅くして隣に並ぶ.
ルルーシュがまた笑った.
「なんだ」
「いいや」
「本当に仕事のほうはいいのか?」
「間に合わなかったら生徒会の妖精さんに手伝わせるさ」
「妖精さん?」
「言われた以上の仕事をこなし,それに加え,リヴァルの書類まで片付けるもの好きな妖精さんのことだよ」
何かを意図した視線をこちらに向け,ルルーシュは口の端を上げた.
ばれてたのか.
「リヴァルにしてはミスが無さすぎたからな.筆跡を似せたことは評価に値できるが,わかりやすすぎる.似せるならもう少し杜撰に処理することだ.会長もリヴァルにしては出来が良すぎると首をひねっていたぞ」
「ミレイさんのリヴァルに対しての評価が少しでも上がるのならと思ったんだ」
「リヴァルを甘やかすな.調子に乗って,会長からもらう仕事の全てをお前に任せるかもしれない」
「甘やかしているわけじゃないよ.それにリヴァルだって僕がやっていることに気づいていないはずだ.やってるのは提出間近なのに手のつけられてないものばかりだから.きっと提出書類があることさえ忘れているんじゃないかな」
ルルーシュと会話をしながら,会計を済ませる.
浮き足立っているとわかるが,抑えようが無かった.
しょうがないと諦めていたことが叶ったのだ.
ルルーシュとの二人きりでの買い物.
楽しくないわけが無い.
ショッピングセンターから出る寸前,ルルーシュがちょっと待てと立ち止まった.
隣を歩いていた僕も何事かと足を止める.
「冷えるからな.これを巻いておくといい」
ルルーシュが右のポケットから綺麗に畳まれたマフラーを取り出して僕の首に巻いた.
「わざわざ持ってきてくれたのか?」
「ああ」
「………ありが,とう」
「礼なら身体で払ってもらうさ」
「生徒会の仕事なら幾らでも手伝うよ」
「それだけじゃないんだけどな」
「は?」
「帰るぞ.ナナリーが待ってる」
「え,ちょ,ルルーシュ!」
最後に物騒なことを呟いて,今度はルルーシュが先を歩き出す.
僕は一度マフラーに手を触れてからその後ろを追いかけ,ショッピングセンターを出た.
ライトアップされたショッピングモール.
ウィンドウガラスに映った人影は二つ.
一つはルルーシュ,もう一つはにこやかに笑ってる僕.
体が芯から温かくなる.
「………? どうした?」
それはきっとマフラーだけのせいじゃなくて,恐らく目の前にいるこの男の影響が大きいのだろう.
「いいや,なんでもない.さぁ,早く戻ろう.茶菓子も買ってあるんだ.今日は僕が淹れるから,3人でお茶をしよう」
「お,おい……!」
ルルーシュの手を取って走り出す.
ガラスに映った自分から逃げるためじゃない.
「ライ!」
ルルーシュと帰るため,僕たちの家に一緒に帰るために.