本日のBGMは怪~ayakashi~化け猫篇でございます.
だからなのかはわかりませんが,そんなにテンションの高い話ではなくなってしまいました.
あれ? おかしいな?(首かしげ)
本当は拍手の御礼にしようと書いていたのですが,長くなってしまったのでこっちに載せることにしました.
小噺 03のライ視点でございます.
昨日自重といっていたにも関わらず書いてしまったのは,あまりにもピンクな感じがルルーシュからしなかったためでして.
故に,今回はピンクな感じを目指してみました(目指してこれかい)(これなんです)
ちゃんとピンク色になっているといいんですけれど….
お互い両想いなのに両片思い.すれ違いに勘違いのもどかしさ.
そういうのが少しでも伝わればいいなと思っております.
あと,拍手&アンケート,ぱちぱちぽちぽちありがとうございます!(平伏)
アンケートを見ていろいろ想像するのも面白いということに気づきました!
今のところ1位ルル+学園祭なのですが,2位のギル&ダールトンで+学園祭になったらどうしよう……と!;
あぁ,そういう可能性もあるのか! とあわあわしながら楽しんでおります.
それはそれでありですね(あたらしいとびらがひらいた音がした!)
それと,拍手の御礼がみにくかったので,見やすくしてみました.
左寄せにして,フォントを小さくしただけなんですが…なってなかったらお知らせください.
おそらく大丈夫 の はず………
「ルルーシュとロロのテロ事件からよくぞ生還した記念パーティを開きます!」
会長のミレイさんの号令の下,その会は開催されることになった.多数決のような民主主義的な決定ではなかったが,反対するものは誰もいなかった.
生徒会に入った当初はこの突発型台風の対処に戸惑い,困り果てることが多かったが,今はリヴァルやシャーリーたちのようにそれも自然の摂理だと納得できるようになっていた.
クリスマスにトナカイの気ぐるみを着たことも,失恋コンテストでミレイさんからトロフィーを受け取ったリヴァルに泣きつかれ,一晩中励ましたことも今となってはいい思い出だ.
ただ,シャーリーから毎日2時間程度聞かされる「今日,そしてこれからのルル」についての講義に慣れる気配は,今のところないようだ.こればかりは時間がどうにかしてくれるような問題ではないらしい.
号令から開催日時,そして各々の担当が発表され今日,パーティ当日を迎えることとなった.
僕の担当はロロと共に会場の設置と,事前にミレイさんが手配した衣装の管理だった.
この衣装というものが毎回曲者なのだが今回は比較的まともなほうで,届いた箱を開けた瞬間安堵の吐息を漏らしたほどだ.
エプロン.
それは紛れも無く,衣服の汚れを防ぐため胸からひざを覆うブリタニア風の前掛け,それだった.僕とロロ以外のメンバーが料理を担当することからも妥当な選択と言えるだろう.
例えミレイさんが料理を担当でない僕に向かって満面の笑みを浮かべ,2色ある内の桜色の方を差し出してきても文句など出てくるはずも無かった.
水着の上に制服を着てクラブハウス内を歩くことを思えば100万倍ましというものだ.
得てして僕はピンクエプロンを着用して会場設置をすることになったのだが
「じゃあ,ロロ,はじめるか.………ロロ?」
返事が無い.
気配も無い.
いやな予感がして振り返る.
広いフロアに一人,取り残された僕.
触れた様子も無く檜皮色のテーブルに置かれたままのピンク色のエプロン.
逃げられた.
そう理解するのに時間はかからなかった.
07.何も言わない事が愛情表現 / 片思いの君へ Ⅰ / お題
キッチンの扉を開けた.
まず視界に入ったのは黒い髪,白いシャツ,ピンクのエプロン.
コンロの前に立ち,料理に勤しんでいるルルーシュの姿だった.
エプロンを渡されたときはあんなに不貞腐れた顔をしていたのに最後にはちゃんと着用し,しっかりとリボン結びしている姿が可愛らしい.
手際よく二つのコンロとオーブンを使いこなしている様は料理に慣れている者のそれだった.
主夫.
一つの単語が思い浮かぶ.
家計簿もつけているし,料理洗濯家事全般を完璧にこなせるのであながち外れていないだろう.
教室でつまらなさそうに本を読んでいる姿も綺麗だが,こうやって料理をしている姿も綺麗だ.
花がちらつく思考と,ともすればルルーシュしか視界に入れないであろう目を引き剥がし,「いらっしゃい」と笑うリヴァルに軽く手をあげて挨拶した.
暖かい香りがキッチンの中に広がっていた.ルルーシュが焼いているのは肉だろうか.フライパンから何かが焼ける音と,匂いが空腹を思い起こさせる.
ようやく感じた匂い,音.
ルルーシュを見た途端嗅覚も聴覚も麻痺してしまう事実に,どうしようもなく重症だなと苦笑してしまう.
「……凄いことになってるな」
それを隠すために床に広がっている惨事を言葉にする.
でも,本当に,それだけじゃなくても酷かった.
メレンゲと思わしき残骸がテーブルと床一面に広がっている.ボウルに残っているものも極僅かで,とてもじゃないが使えそうに無い.最初から作り直しだな,これは.
じゃれているミレイさんとシャーリーを見る.どちらが犯人かなんて考えるまでも無くシャーリーだと断言できる.そしてそれは間違っていない.
「もー,ライ,笑わないでよ!」
「すまない.けれど,今日はまた盛大にやったなと.タオルを取ってこよう」
「じ,自分でするからいいよ!」
「だが,その格好で廊下を歩くのは……おい,シャーリー!」
「あーらら,いっちゃったわね」
「人の話は最後まで聞かないのは相変わらずですね」
「そっちの調子はどう?」
「ロロには逃げられてしまいましたけれど,あとは滞りなく.いくつか仕掛けも作りましたから,驚かせるにはちょうどよかったのかもしれません」
「なら,ここはリヴァルが片付けるから」
「え,オレっスか,会長~」
「アンタ,ジャガイモ剥いているだけじゃないの.だから,ライはルルーシュを手伝ってあげてくれない? さっきからなんで俺だけって文句ばっかり言うのよ」
「この光景を見る限り,ルルーシュばかりが働かさせれているのでは?」
これ以上仕事を増やしたくないと頑なに話題に入らないルルーシュに向かって一歩二歩と足を進める.
顔がほてるのがわかる.ガスの熱からくるものではない.心臓の音が煩すぎて誰かに気づかれるのではないかと不安に思う.
おかしなことをしないように,おかしなことを言わないように.
歩きながら呼吸を整え,普通の会話というものを考える.
「また何か考え事か? ルルーシュ」
よかった.変に裏返ったりしなかった.
ルルーシュがゆったりとこちらを向く.
アメジストの瞳に射抜かれた.
濃い赤みの紫色のそれ.
ずっと見ていたら吸い込まれてしまいそうであわてて視線を外した.
あの瞳は魅力的すぎる.誰もが焦がれ羨んでしまう品と魔力のある瞳だ.
気を紛らわすために鍋をかき回す.
これがなんという名前の食べ物だったか……シチュー,ポトフ……?
「………いや,…………っ,お前,何着て…!」
「何って,ルルーシュとリヴァルが着ているそれと同じものだが…?」
「会長!」
「何よ?」
「何でこいつがエプロンなんてつけているんです! 会場担当でしたよね?」
「そーだけど,かわいいんだからいいじゃない.それに今更よ,エプロンぐらいで怒らなくっても」
「今更って,そんな……」
会長に向かって叫んだ後,ルルーシュは驚きと戸惑いを隠さない顔で僕を見た.
流石に傷つく.
ピンクのエプロンが似合うといわれるのもどうかと思うが,そんな,全力で否定するような顔をしなくてもいいじゃないか.
漏れそうになる憂鬱を含んだため息をスープと一緒に飲み込む.味もわからないのに胡椒を2回振りかけた.
隣のコンロに視線を向ければ,ルルーシュに忘れ去られた豚肉がミディアムレアから本格的なミディアムに向け,表面の色合いを濃くしているところだった.
「ルルーシュ,そろそろいいんじゃないか?」
「あ,あぁ……」
「結果的にこうやって料理を作ることになったんだ.それに,制服を汚さなくて済むからエプロンも必要ないってわけじゃない.ただ……」
「ただ?」
「廊下を歩くたびに窓の外から刺すような視線を感じる.シャーリーも同じ目にあってなければいいが」
「そりゃあ,幻の美形がピンクのエプロンなんてかわいらしいものを着てふらふらしてたら女子はほかっておかないデショ」
「うんうん.よく似合ってるわー.流石ライ,期待を裏切らないわね」
「そんな期待はいりませんよ.それで,僕は他に何を?」
「じゃあ,ローズマリーを出してソルベにして頂戴.ルルーシュも早く仕上げて!」
「ローズマリーをソルベにですね,わかりました」
鍋の火を消してルルーシュの元から離れる.
いつも通りできたことにそっと息を吐く.
ルルーシュの傍にいると心地よい安心感と共に,緊張と不安が体を襲う.
そして,ルルーシュの話を楽しそうにするシャーリーの顔がちらつき,胸が痛む.
全身で恋をしている彼女を裏切り,謀り偽っている自分への戒めのように深く,抉るような痛み.
何度逃げようと試みたことか.
けれど,その痛みすら彼の傍にいたいという欲に抗うことはできなかった.
何も言わない.
何も告げない.
記憶を失っている僕が,もしかしたら皆に危害を加えてしまうかもしれない僕が誰かと強いつながりを持てるはずがない.
だからそのときが来るまではどうか近くに.
傍にいることを許してください.
神に乞うはずの願いを彼に.心の中だけで口にした.
この想いは神にすら許されない罪深きものだから.
PR